“無罪請負人”と異名を持つ敏腕弁護士がいる。
刑事裁判になれば99%は「有罪」となる日本で、ロス疑惑をはじめとした
数多くの著名事件を手がけ無罪や勝訴の判決を勝ち取ってきた弁護士・弘中惇一郎。
そんな弘中氏と6年間事務所を共にした弁護士・山縣敦彦との対談が実現。
信頼される弁護士であり続けるための依頼者との関係、そして弁護活動にかける想いとは?
二人の出会い
- 弘中
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改まった形式での対談は初めてだね。今日はよろしく!
司法試験に受かった後の司法修習で私が指導担当(※)になったのが山縣さんとの出会いだね。 - 山縣
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今から13年くらい前でしょうか。
弘中先生は、ロス疑惑事件をはじめとした数多くの著名事件を手がけ、無罪や勝訴の判決を勝ち取られてきた経歴から、「カミソリ弘中」の異名を取る辣腕弁護士であることは知っていました。メディアで見るイメージは怖そう…僕の指導担当が弘中先生と聞いたとき、とにもかくにも凄い先生に当たってしまった!と内心焦りました(笑)しかし、実際に修習が始まり、印象ががらっと変わりました。今でこそ、8人の弁護士が在籍していますが、当時は、弘中先生と、娘さんで弁護士である、絵里先生と二人だけの事務所でしたね。アットホームな雰囲気の中、楽しそうに仕事されていて、お客様とも談笑されている先生を見てびっくりしたことを覚えています。 - 弘中
- 僕がメディアに出るのは事件に関する記者会見の場面が多いから、内容が内容だけに笑顔はあまり出せないからね。だから怖そうに見えちゃうのかな?実際会ったらいい人だったって良く言われるよ(笑)
- 山縣
- それはありますね。弘中先生との出会いは、僕にとって人生の転機になりました。あの出会いがなければ、今の自分は絶対にないですね。弁護士も辞めていたかもしれません。当時、企業の取引などを法務的にサポートする「企業法務」を扱う弁護士を目指していた僕は、訴訟のプロフェッショナルである弘中先生のもとで、企業法務とは異なるやりがい、訴訟の奥深さなど多くの学びを得ました。弁護士としてこんな世界があったのか?と。先生の元で自分の能力を磨いていきたいと思うようになり、無理を言って弘中先生の事務所に入所させていただきました。
- 弘中
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そうそう。今勤めている事務所を辞めてきたと。
先生の事務所で働きたいと相談されたときはびっくりしたね。
無罪請負人・弘中惇一郎
に学んだこととは?
- 山縣
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弘中先生から学んだことは、たくさんありますが、3つ挙げるとしたら…
①当たり前のこととして前提のようになっている部分から疑ってみる
②依頼者の話をできるだけ遮らないで、ひたすら聞く
③依頼者が真に何を望んでいるのかを探る
①の「前提となっている部分を疑う」は、他の弁護士がスルーしていても、弘中先生が「そもそもさ…」と疑問を呈することがよくあり、そこを掘り下げていくと、実は事件解決のキーだったってことが非常に多いですね。②③に関しても、依頼者の中には、案件に関係ないことをたくさんお話しされる方もおられるのでついつい話を遮ってしまいたくなることもあります。弘中先生は遮ることなく、とにかく依頼者のお話を聞いておられますよね。一見関係ないような話の中から、依頼者が本当に望んでいることが見えてきたりと、思わぬところで解決の糸口に繋がることもあり、こういったことがすべて僕の弁護活動の基軸になってますね。 - 弘中
- 何だかこそばゆいなぁ(笑)
- 山縣
- このような機会ですのでお聞きしたいのですが、刑事裁判になれば99%は「有罪」となる日本で、数々の無罪を勝ち取られた弘中先生が実践されてきたこと、ポリシーを挙げていただくとしたらなんでしょうか?
- 弘中
- しっくりこないと感じることがあれば、そのままにしないことですかね。他人から言われたことに流されるのではなく、何だかしっくりこないな、と感じることがあれば、自分の頭で考えて、実際の現場に行って自分の目で確かめたりと、自ら動いて、それを解決していくことかな。いつも無い知恵を絞って一生懸命考えてるよ(笑)あとは仕事を楽しむこと。これまで弁護を務めた依頼者の中には、世間的には悪人と言われていた方もいましたが、皆さん直接お会いし、人柄などを納得してから引き受けています。依頼者のことを人として好きになっちゃうんだよね。依頼者を助けたいという想いが、弁護活動への工夫やアイデアとなり、それが仕事の楽しさに繋がってますね。
無罪請負人・弘中惇一郎が
一目置く、
山縣弁護士の強み
- 弘中
- 山縣さんは、とにかく勉強熱心だよね。弁護士の仕事に役に立つからといって、知財戦略を学びに大学院に入りなおしたよね。弁護士になったら、普通はもう学校に入りなおしてまで勉強なんかしないのに(笑)あと、依頼者にとことん寄り添うところ。単に寄り添う、話を聞くだけでなく、すぐに動いたり、深いところで寄り添っているイメージだな。誰にでもできることではないね。
- 山縣
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お褒めいただき恐縮です。依頼者との付き合い方がウェットすぎると自分でも思います(笑)勉強に関していうと、弘中先生の事務所は、普通の事務所なら来ないような特殊な案件も多く、そういった難しい案件を担当していくうちに、これからの弁護士は、単に法律の知識だけでなく、依頼者の様々な業界に即した専門性の高い知識を持つことが必要だと痛感したからです。そのためには貪欲に勉強を続けなければと。弘中先生のご理解とサポートのおかげで夜間の大学院を修了することができましたが、仕事との両立は正直大変でした。様々な分野の知識を深めていくうちに自分のキャリアを広げられるような新しい分野の案件を仕事として受けてみたい、という欲も出てきました。
社会の変化のスピードがますます速くなり、依頼者のニーズも幅広くなっている今、弘中イズムを継承しつつ、さらに発展させた形として実を結ばせたいと思っています。こういうことは先生の事務所でお世話になったからこそ考えるようになりましたし、結果、それが先生への恩返しになると信じています。そんなわけで、これからもご指導のほどよろしくお願いします! - 弘中
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これからも!?
年齢が年齢だからそろそろ(笑)
今日はありがとう。楽しかった!
弁護士弘中惇一郎
弁護士法人法律事務所ヒロナカ代表弁護士。1945年山口県生まれ。東京大学卒業後、1970年弁護士登録。数々の裁判で無罪判決を勝ち取っていることから、通称“無罪請負人”と呼ばれる。クロロキン、クロマイ各薬害事件、ロス疑惑事件、薬害エイズ事件、郵便不正事件、陸山会事件などの弁護人を担当したほか、カルロス・ゴーン氏の弁護人も務めた。
弁護士山縣敦彦
マーベリック法律事務所代表弁護士。1979年東京都生まれ。慶應義塾大学大学院修了後、2007年弁護士登録。法律事務所ヒロナカ、三村小松山縣法律事務所代表を経て、2023年より現職。陸山会事件、日本振興銀行事件、ゴーストライター疑惑事件、震災復旧談合事件、船舶グループ会社更生事件、芸能人の移籍騒動など、多数の著名案件に関与。